ゆうかは幼い頃から整った顔立ちで、同じクラスの男子から冷やかされることも多かった。大人しい性格の彼女は、言い返すこともなくただ黙ってニコニコとするのみ。心無い言葉をかけられても笑顔を絶やさず、常に人の良いゆうかちゃんで居続けた。そんな彼女の転機となったのは、高校進学。人一倍受験勉強に励んだゆうかだが、試験直前に体調を崩し、滑り止めで受けた学校にしか受からなかったのである。努力は報われると信じていたゆうかに取って、それまでの人生を否定されるほど大きな事件であった。すさんだ心に新しい同級生の甘言が入り込む。次第に派手な化粧をし、言動は粗野になり、学生の身分ながら夜な夜な街へと繰り出すようになった。いわゆる不良のような友人たちに囲まれ、表面上はとても楽しく充実している生活。しかしながら実際には何も生み出さない空虚な毎日。心配する両親の言葉もただのうざったいお小言としか思えず、食卓で顔を合わせてもほとんど会話を交わさない日々が続いた。ある日ゆうかが友人とファミレスにてドリンクバーだけで三時間程粘っていた時、突然母親からの着信があった。普段なら無視する親からの連絡。けれどなぜかその時は、妙な胸騒ぎがして電話に出てみたのだった。「お父さんが倒れた」。突然のことに取り乱すゆうか。しかし考えるよりも先に体が動いた。カバンを持ち、病院へとひた走る。病室へ入った彼女が見たものは、何本もの管を取りつけられた父の姿だった。泣き崩れる母を見たゆうかは思った。もう両親に心配をかけたくない。その日から毎日、学校が終わった後は病室へと通う毎日が続いた。父の横でひたすら勉強に励む毎日。少しずつ好転する父の容体とともに、彼女の成績も上向いていった。悪い友人たちとの付き合いもなくなり、母親と笑顔で会話することも増えていく。一年後、無事に父親は退院し、ゆうかも志望していた大学に無事合格した。大学でも熱心に勉強したゆうかは、今医療器具の会社でOLをしている。父を助けてくれた医学の力は、同時にゆうかを更生させてくれた力でもある。自分の仕事が見知らぬ誰かを助け、そして幸せにしていればいいなと、ゆうかは毎日思っている。